とある訪問看護師の体験談
訪問看護師のAさん
現在は訪問看護師として小児在宅医療に関わるAさんのエピソードを紹介します。小児在宅医療に関わることになったきっかけや、この仕事のやりがいをみていきましょう。
ある経験
Aさんはもともと、病院の小児病棟で働いていました。小児科は、治療や療養だけではなく子どもの成長や発達に深く関わる場であることに強いやりがいがあると言います。Aさんには小児科勤務時代に深く心に残った経験があります。当時担当していた、残りの人生が短い子どもが、最後は自宅にいたいという理由で退院したのですが、すぐに状態が悪くなり再入院することになりました。その後体調が落ち着き、あらためて自宅に戻るのかと思ったのですが、その子にとって自宅が怖い場所となり帰れなくなってしまったのです。結局その子は病院で最期を迎えました。このときAさんは「もっと子どもを支えられる環境があれば、安心して自宅に帰り最後を迎えられたのではないか」と思ったそうです。
転職のきっかけ
それから1年ほどは小児科のICUに勤務していたAさんですが、先述の経験もあり、働きながら「子どもたちのケアは病院じゃなきゃできないのだろうか、最後を病院で迎えるのが本当に幸せなんだろうか」と思うことが増えました。そんなときに、訪問看護ステーションを開業した先輩から「一緒に働かないか」と声がかかりました。それが現在の職場なのですが、この訪問看護ステーションは大人だけではなく子どもも対象としています。「すべての人が家に帰る選択ができるように」という理念があり、それに共感したAさんは転職を決意しました。
現在
転職した当初は、小児科の経験しかないため大人の患者さんへの看護ケアができるか、患者さんの自宅に訪問した際の振る舞いはどうすればいいのかなど不安な部分もありましたが、働いていく中で徐々に慣れていきました。逆に、子どもへの医療的ケアの提供は得意なので、小児患者への対応に不安のあるスタッフから頼られる存在になりました。
また、病院と家では環境が大きく違うことを実感したと言います。必要な医療資材が常に手の届く場所にある病院とは違うので、不便に思うこともありました。一方で、しっかり準備して適切な処置を行えば、自宅でも問題なく子どもを支えることができると確信したそうです。家族への声がけなども、病院で働いていた経験が活きたと言います。そしてなにより、自宅というのは子どもやご家族にとって最も安心できる環境なのだとあらためて感じたそうです。病院で働いていたときとは比べものにならないくらい子どもやご家族の笑顔が明るく、それがAさんの一番のやりがいになっています。